【連載】Yumie Times + vol.11 《Rosy moment》
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2016/05/30

【連載】Yumie Times + vol.11 《Rosy moment》

スタイリスト風間ゆみえさんが、ファッションからライフスタイルまで、暮らしのなかで、ふと心ときめく「あの瞬間」をお届けします。今回のテーマは「Rosy moment」。

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美しいばらの庭で考えごと


黄色いばらの花のワンピースを着て出かけた吉日。美術館脇のばらの咲く庭には、ばらを眺めるひとよりもたくさんの人がその可憐なばらを前にシャッターを押して、スマートフォンやデジタルカメラにおさめて満足気にばらの庭を後にする。
展示最終日の長い列に並びながらその光景を眺めていた私は、SNSに忙しい友人に、「ちょっと…」と、人差し指でばらを差しながら目配せをして列から外れると、ばらの庭を少し歩いた。花びらに鼻先を寄せると、香りは微かで、私もiPhoneの画面にばらの花を覗かせた。小さな画面に所狭しと写り込んだばらの花は、画面から飛び出してきそうなほど、鮮明で、小さく囲ったおかげでクローズアップされたばらの花は、余計に生を強く感じさせていた。


自宅に戻れば留守番電話に点灯するボタンを押していた頃(昔)には、ポケットから取り出す携帯のカメラもなく、ばらの咲く庭でひとは、花を捉えるのではなく、眺めていたのだったろうか…、ぼんやりと想像に至らないでいるけど、なんでも簡単なことがあたりまえで普通な現在(いま)、ピンク色のばらは携帯のカメラに記憶されて、いつだってあって美しく眺められるんだものね。ありがたい。
携帯電話、簡単なカメラのないころから見れば異様な光景だろう。でも、確実に人々は満足気で幸せそうな顔をしてばらの花の前を通りすぎる。だから私もばらの花を撮ったらみんなに送ろう。
そう頭の中でつぶやくけど、どこかで、やっぱりスマートフォンのない時間が好きだとも思っている。日頃たいへんお世話になっているのに失礼な私だ。カメラロールには2500枚の写真が保存されている。今日、気に入って着た黄色いばらのワンピースで、気分よくいる瞬間もそこに保存されている。

風間ゆみえ

EDITOR / 風間ゆみえ

独自のファッションセンスで、ファッション誌はもとより、ブランドのディレクションまで活躍の場を広げ、人気タレントやモデルの熱い支持を集めるスタイリスト。そのセンスは、時にファッションの枠を越え、生き方、フィロソフィなど、生み出す世界観そのものが、年齢を問わず多くの女性を魅了してやまない。著書は『LIKE A PRETTY WOMAN』(スタイライフ)、『Lady in Red』(扶桑社)。

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